女子大生が痛い文章で語る難病闘病エッセイで日本の医療を見る
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最終更新日:2017/07/18
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困ってるひと-大野更紗のレビュー、感想です。
久しぶりのネタバレ有の感想です。弟に薦められて読んだ難病の方のエッセイです。
この困ってるひと [ 大野更紗 ]の特徴は、田舎出身の25歳のうら若き女性が痛い文章でおもしろおかしく書いたもので、非常に読みやすいです。
痛い若き女子大生の難病の闘病エッセイで、読み応えもあります。
この方は難病の症状が現れてからいろいな病院で病名もわからず1年も放置され、
やっと大学病院で1年の過酷な検査の結果、難病の病気が分かったという幸運な方です。それが厳しくて辛いものだったとはいえ、日本だからこそ大きな病院で適切な検査や治療が受けられたのではなと思います。
痛い文章が特徴的で、病院も特有の非常に手の掛かる患者であったと思いますが、
その文章に筆者の闘病の辛さというのが伝わってきます。上智大学の大学院生だけに文章は面白いです。
若い女性特有の感情の起伏とか、独特なマイナス志向や方向転換などそれが事細かに書いていることが私たち読み手には非常に気持ちわかろうとすることができるということです。
病院の手厚い看護は日本の医療が優れているというのがわかる
病院の手厚い看護がいろいろ書かれており、どこまでも日本の医療は優れているというのが証明できている。
賢い医者や看護師の、患者のワガママを聞き、病気の説明をし治療に同意させて治療を受けさせるという簡単だけど非常に難しい病院の努力が伝わってきます。
途中で転院した難病の神経系病院での、悲惨な現状を文章にして、それを若い女子大生である筆者は嫌悪することもあまりにも当然のことで、
それを嫌悪することは悪いことではないので、(誰でも汚物は嫌です)
手記(日記)としては非常に良いものだと思います。
病気は難病であれば難病であるほど、
見つけることが難しく、治療も難しいというのはあまりにも当たり前のことです。
その当たり前を大学生の視点でかく、辛さが少しでも共感できる簡単な文章で書かれていることが等身大の視点で書かれているところが評価できます。
患者は若ければ若いほど治療は難しいと思う
極論を言えば、老人が難病で死ぬ選択肢は避けられないものかもしれないが、
若者は死ぬわけにはいかない、若者の治療は「死ぬような病であったとしても」後遺症を最小限にして
社会へ送り出すという難しさに挑戦していると思います。
大学病院は難病や治療が難しい、しかも年齢が若いなどリスクのある患者ばかり
若いと痛がるし、説明しても理解しにくいしと、治療レベルは上がりまくりです
最善の努力とさらに、患者家族からは訴えられるかもしれないと言うリスクも背負いながら大学病院の先生は治療に励んでいるんだなぁとおもいます。
病気と言うのは、治るのと治らないのがあるのは当たり前
脳出血で半身麻痺になれば、もう脳出血は治ったとしても、半身麻痺は一生治らないわけで、病気になって医学上、それ以上治療をしても効果がなく、残存する症状が経過によって到達すると認められる最終の状態に達したときを症状固定と呼ばれています。
それを、事故や労働災害では症状固定=治癒と解釈されています。(最近知ったことですが)
自分の運命を受け入れることは、人間にとって大事なことです。
その運命も、読んでいると非常によく受けれている強い女性じゃないか、心配して損したという気持になります。
本の最後になるにつれて社会復帰に近くなるにつれて現状への不満が飛び出してくる
本の最後になるにつれて、自分は元気になってきたのに、周りに対して辛く表現するのはどうかと思うのですが、それも、25歳の若き女子大生で大いにわかることです。
それぐらい心の余裕が出てきたことだと思います。
医師の「よくなっています」「いつか必ず、お嫁にいけるし、子供も産めます」という言葉を否定するのはおかしいと思います。
医者は、患者のために治療をしているし、若者に対しては、さらに多くの努力をしていて、
もし医者が「あなたは難病なのでよくなりません」「今後、お嫁にいけないし、子供も産めません」って言ったら
患者が自殺してしまうだろうが。
そもそも、「なんでいつか必ずお嫁に行かなければならないのか」という筆者の発言もおかしい。
もしそう思うのであればデートなんかする必要は無い。
最後あたりに登場する難病の男性は筆者の思うように動かすラジコンか?
さらに医者の発言というのは責任の伴うもの。
「いつか必ず、お嫁にいけるし、子供も産めます」という言葉は医者の責任を伴って発言しているのであるから、
その発言をした医者はいい先生に違いないと思います。
最終はなし崩しになってしまっているので、そこらへんのエピソードは本から抜いても
よかったですが、まあまあいい本だと思います。
病院は居場所が無い居心地が悪い場所で正解だと言うこと
この筆者がよくわかっていないことが、病気を受け入れて、本人は自分の状態が悪い悪いと書き続けているが、最終的には実は動けるようになっているし、結局は退院できることになっているということ。すごく順応できてるじゃないか。
うちの弟もずっと入院していたわけではなく、ある程度を境に外泊とかして帰宅していく
病院は患者をうんざりさせるという方向は正しい。
うんざりさせて退院して、立派に生活をしてもらうことが当たり前だから。
病院は診療報酬という点数でお金が計算されているので、サービス料金はそもそも入っていない。
だから、病院が居場所がよくて長居、長生きできるような場所である必要は無いと思う。
病院と言う名の大難病リーグ養成ギプス学校で立派に心も強くなって
日本の難病の現代入院生活流れに非常に沿っていると考えられると思いました。
このおそらく治療後半に連載が開始された頃から、社会復帰してから書くところまでの心情の変化と言うかそういうのがそういうのが伝わって面白いと言うのが私の感想です。
意地悪な人や嫌がらせしか脳の無い働く職員は病院には山ほどいる
そういうのに出会わなかったというのは非常に運がいいですね。
お勧めな本でした。
困ってるひと-大野更紗の感想終わり。
困ってるひと [ 大野更紗 ]
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[…] 私の考えでは、以前に困ってるひと-大野更紗のレビューでも書きましたが、病院は患者にとって心地いい空間である必要は無いと考えています。 […]
更紗さんが どれだけ 辛かったか そして どれだけ 素晴らしいか わかりますか お嫁の 件は そういう意味じゃないのです 私にはわかります 難病の人に対して 汚物とは酷いですね 彼女は凄いです オアシスに行き着くまでの あの壮絶さ その後も壮絶ですが もし自分なら 到底耐えられないでしょう 彼女の苦痛を 想像してみてください